「イントレプレナーカンファレンス 2014 July」に参加してきました。
このイベントはとても人気がありまして、こちらで事前にお知らせしたのですが、記事を公開してすぐに満席になってしまったのでした。記事を読んで申し込もうと思ったけれど間に合わなかった方、ごめんなさい! そんな方のためにも、当日の様子をレポートしたいと思います。
先日で2回目の開催となる本イベントは、自分のビジョンを組織の中で実現する「イントレプレナー」の集まりです。
今回のテーマは「ボトムアップで新規事業を立ち上げる秘訣」。実際に新規事業を立ち上げた方々によるパネルディスカッションと、参加者それぞれがボトムアップ型の新規事業のアイデアを出し合うワークショップが行われました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、まず初めに理論編として、山口高弘さんより、大企業における一般的な新規事業の立ち上げ方と比較してイントレプレナーによる新規事業の立ち上げ方の違いが説明されました。
今回のイベントのテーマである「ボトムアップ」がやはり大きなポイントで、企業のビジョンや市場分析の結果などを前提にテーマが与えられてスタートする一般的な新規事業開発に対し、イントレプレナーの場合は個人の強い思いが出発点になっているところから、大きな違いがあります。
そしてイントレプレナーは、組織の枠を超えて人を巻き込み、不確実で荒削りなアイデアでも実際に試してみながら軌道修正と意思決定を素早く繰り返していくことで、結果として事業を成功に導きやすいのだということです。
その後、各パネリストより、以下の様な実践内容が紹介されました。
山口高弘さん(キャリア大学 パートナー株式会社野村総合研究所 ビジネス・イノベーション室長 GOB-IP(GOB-Incubation Partners)Co-Founder)
プロボクサー、起業家、NPO支援など、8つの職業を経験した山口さんが野村総合研究所で手がけるのは、社会人を対象としたインキュベーション事業「Create U」。
『Why(自分自身が社会おいて成すべきであるもの)』と現在の仕事がミスマッチを起こしている優秀な人材を、新しい価値を創造できる「イノベーター」に育成する。具体的には、『Why』を持つ多様な人材同士が交流することで一歩踏み出すきっかけをつくる場の提供や、アイデアを事業化するキャンプの開催、ビジネスプランニングの支援、投資家のマッチングなどを行っている。
通常コンサルティングファームではやらない事業だが、役員にも「やらねばならない」という使命感を感じてもらうため、説得方法に工夫を凝らしたそうだ。
岡田哲意さん(トーマツベンチャーサポート株式会社 教育セクター責任者・起業家教育事業責任者)
会社でベンチャー企業の支援を行っていた岡田さんは、その経営者のノウハウ、仕事の仕方を起業家以外の人に活かしてほしいと考えた。元々教育事業に興味があり、NPOにも所属していた岡田さん。NPOの人脈をフル活用したほか、会社では7300人の社員全員にメールして高校を紹介してもらうなどし、「自分のやりたいことを仕事にする」考え方を高校生に伝える「ドリームスクール」を立ち上げた。
今社会に求められていることは、「自分のやりたいこと」と「社会に役立つこと」を結びつけ、新しいものを作り出せる人材。そんな人材を育成するためのワークショップを行う。現在は「新規事業人材」を採用したい企業のインターンシップ選考や、行政の「起業家育成」に取り入れられている。
鈴木啓太さん(プロダクトデザイナー。PRODUCT DESIGN CENTER代表)
美術大学卒業後に株式会社NECデザインに入社し、携帯電話、パソコンのデザインに携わってきた鈴木さん。鈴木さんが会社員時代に個人的な活動として「富士山グラス」を開発、「Tokyo Midtown Award」の2008年審査員特別賞を受賞する。退社後、デザイン会社と生活用品メーカーの2社を立ち上げている。
メーカーでの経験を活かし、小さいながらもチームを作って商品開発をした。特にこだわっているのが、アイデアの段階から精度を上げ、最終形に近いリアルなものを作ること。それによって、周囲も本気で協力してくれるようになる。プロトタイプ用の「ガラスに見えるプラスチック」を追及するため、費用や時間を惜しみなく注ぎ込んだという。ビールを入れると富士山ができるこの商品は、今や「日本の土産」として親しまれている。
下垣圭介さん(株式会社セプテーニ・ベンチャーズ/gooddo事業責任者)
インターネット広告の会社で営業をしていた下垣さん。現在は新規事業を担当し、「gooddo」という社会貢献を身近に感じられるプラットフォームを開発した。
「人生は一度きり」と信じる下垣さんは、個人として一生をかけてやれることを見つけたかったという。社内でやることのメリットは「ブルーオーシャン」にチャレンジできること。会社から資金の提供を受けたとはいえたった1人で始めたこの事業も、今ではたくさんの仲間とともに動き出しているという。「30年後、国に収めている税金の使い道を自分で選べる社会にしたいですね」と語ってくださった。
羽渕彰博さん(株式会社パソナテック 新規事業推進室、NPO法人StartupWeekendファシリテーター、イントレプレナーカンファレンス主宰
社内で新規事業の立ち上げをしつつ、最近では「コスプレソン」等ハッカソンの司会を頼まれることも増えてきたという羽渕さん。
Startup Weekendのファシリテーターをしていたことが縁で紹介してもらった別会社の役員に提案し、自分のWebサービスをつくりながら学べるプログラミング講座「ハッカー部」を立ち上げた。
その背景には、人材会社で終身雇用の終わりを肌で感じ、自分達の世代は自分で仕事をつくっていける人材になる必要を感じたそうだ。すでに法人や官公庁への導入が決まっているそうだが、将来的にはアジア進出を視野に入れているという。
各パネリストの実践内容紹介の後は、事業立ち上げ期の資金をどう準備するか、会社から信頼を得てやりたいことをやらせてもらえるのはなぜなのか、といったことが話し合われました。
資金については、最初は自分の持ち出しという人もいれば、はじめに人は出してもらえなかったけれど資金を投資してもらえた人もいるなど様々。中には何千万円を支出してから事後承諾を得るという強硬派も(!)。
また共通していた事はイントレプレナーとして事業の立ち上げを許可してもらうには、それまでの仕事ぶりで会社から認められることが大事だとのこと。とても納得感がありました。
ワークショップ
イベントの後半は、参加者同士でグループを作ってワークショップが行われました。
イントレプレナーフレームワークシートに、各自が思い描く事業について記入した後、グループ内でシェアし、アイデアやアドバイスを交換し合います。
グループを変えてもう一度繰り返し、最後に各グループから一人ずつ、事業のアイデアを発表しました。
参加者は20代と思しき若手社会人が目立ち、とても明るい雰囲気。新規事業について具体的に検討中の人が多く、皆さん積極的に参加されていてとても盛り上がっていました。
最後の発表では、「実は社内でボツになったアイデアだったんですけど、みんなの意見を聞いているとやっぱりやらないといけない気がしてきました」なんて言葉が聞かれたのも印象的でした。
「イントレプレナーカンファレンス」は、社内で新しいことを始めたい人たちが、組織を超えて仲間を見つけて、アイデアを実現していくのに最適な場だと感じられました。イントレプレナーカンファレンスに参加したい方は、イントレプレナーカンファレンスのFacebookグループにて告知しているので参加をおすすめします。
https://www.facebook.com/groups/IntrapreneurConference/
取材・文/やつづか えり・木納 静穂 撮影/やつづか えり

FOLLOW US
おすすめの本
BOOKS