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人材採用・育成はクリエイティブな仕事

2014/05/28   更新:2019/04/02

もう2週間ほど経ってしまいましたが、『「働きがいのある会社」のつくり方』というセミナーに参加し、前回報告した「凸凹ミックス会議」に続き「ダイバーシティ経営」について考えました。

毎年Great Place to Work® Instituteが発表している「働きがいのある会社」ランキングというものがありまして、このセミナーは、2014年度の日本版「大規模(従業員1000人以上)部門」で上位に入った日本マイクロソフト(1位)、ワークスアプリケーションズ(2位)、アメリカン・エクスプレス・インターナショナル, Inc.(3位)、堀場製作所(11位)の方々が、”「働きがいのある会社」のつくり方”について講演するというものでした。(6月には中規模部門、小規模部門の上位企業による講演があります

ちなみにアメリカでの研究によると、これまで「働きがいのある会社」ランキングに掲載された上場企業の株価は、常に主要な株価指数を上回っていたそう。社員の満足度だけでなく、業績向上のためにも、「働きがいのある会社」に学べることがありそうです。

「働きがい」とダイバーシティは大きく関係していそう

さて、セミナーに参加してわかったことの一つは、「働きがい」と「ダイバーシティ」にはとても親和性があるようだ、ということです。

ランキングの元となっている調査では、「働きがい」の5つの構成要素として<信用><尊敬><公正><誇り><連帯感>の実現度が評価されているのですが、確かにこの5つは多様な人材を活かすために不可欠でしょう。例えば、せっかく会社の女性比率が上がっても、待遇や仕事の内容などに不公平を感じるなら「働きがい」は損なわれますよね…。

今回登壇した方々は、全員「ダイバーシティ」を重要な課題と捉えて取り組んでいることを強調されていました。また、ただの「ダイバーシティ」ではなく、「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉を使っている方が多かったです。

企業における「インクルージョン」とは、「ダイバーシティ=組織内に多様な人材がいる状態」がさらに発展し、多様な人材がそれぞれ対等に力を発揮し、一体化して組織に貢献している、といった状態のこと。
働きがいのある会社は、ダイバーシティ経営においても一段高いところを目指しているようです。

「働きがい」づくりのポイントは、経営層の本気の取り組み

前回の記事で、多様性のある組織を目指すなら、採用や評価に手間をかける覚悟が必要になってくるだろう、という感想を書きました。今回皆さんの話を聞いて、「働きがい」あるいは「ダイバーシティ&インクルージョン」の成功のポイントは、やはり経営層がどれだけ本気で手間やコストをかけるかにあるのだということがよく分かりました。

例えばアメリカン・エキスプレスの田島副社長に対する質問で、「社員の自発的な活動を期待しているんだけど、なかなか動いてくれず…。どうしたらいいでしょう?」というものがありました。
田島氏は、
「社員が主役であることを伝えきる。そのために経営陣、リーダーが本気になって、社内コミュニケーションに時間を割き、コミットメントを示すことが大事」
「面白くする、楽しくするクリエイティビティが大事。経営層は社員が楽しいと思うしくみを作り、飽きられてきたらまた新しく作っていく努力が必要」
という風に答えておられました。

アメリカン・エキスプレスには社内テレビ局があって、社員がキャスターになり会社のニュースを伝える番組や、プロジェクトを成功させた社員のドキュメンタリー番組なんかをオフィス内で常に流しているそうです。

経営層側からの発案で始まったことのようですが、最初は恥ずかしがっていた社員も、自分や同僚が出演することで刺激を与え合ったり仕事について深く考えるようになったり、という効果が出てきているとのこと。

「社員が主役」「自発性を尊重」と言っても、いきなり「さあ、やりたいことをやりなさい」と待っているだけではだめで、社員をうまく乗せるのは経営層の役割だ、ということなんですね。それを繰り返しているうちに、本当に自発性が芽生えてきて、社員の側からいろんな動きが出てきた、というのが最近のアメリカン・エキスプレスの状況なのだそうです。

また、ワークスアプリケーションズの牧野CEOは、優秀な人材に働きがいを感じてもらうために相当なコストをかけている、ということを一貫して語られていました。
この話がとてもおもしろかったので、具体的に紹介したいと思います。

ワークスアプリケーションズの「とんがった」採用・教育方針

まず、話の冒頭で牧野CEOが強調したのは、紹介する内容はあくまでワークスアプリケーションズという会社に最適なやり方であって、同じ施策をとったからといってどんな会社も働きがいのある会社になるかというわけではないだろう、ということです。

どんな会社にしたいのか、そのためにどんな人材が必要か、ということを明確にすることが先で、それによって取るべき施策は異なるのだ、ということですね。

ワークスアプリケーションズの場合、「優秀な人を採用し、継続的に働いてもらう」ことを目的に、非常に「とんがった」採用、教育、組織の文化醸成をしている、という印象を受けました。

「優秀な人を採用し、継続的に働いてもらう」
これだけ見れば、とても平凡な目標のように見えます。どんな会社だって、優秀な人を採用したいし、長く働いてもらいたいはず…。

ワークスアプリケーションズがとんがっているのは、「なぜ優秀な人でなければいけないのか?」「どのような優秀さを求めるのか?」という部分をものすごくクリアにしているところからきていると思います。

「なぜ?」に関しては、「優秀でなければ務まらない仕事だから」ということのようです。社員の優秀さが事業の成否に直結するということですね。

「どのような優秀さか」ということに関しては、Webサイトの採用のページを見ると、「常識や前例に捉われず、0から1を生み出す能力(新卒採用の「採用理念」より)」「ロジカル・シンキング(論理的思考力)とクリエイティブ・シンキング(発想転換力)を兼ね備えた、問題解決能力(キャリア採用の「ワークスが求める人材」より)」と書かれています。

ちなみに、経産省の調査によると、企業の人事担当者が「自社で活躍している若手人材(ハイパフォーマー)が共通して持っている能力要素」として回答しているものは、「コミュニケーション力」「人柄(明るさ・素直さ等)」が突出して多く、「主体性」「粘り強さ」が続きます。

graph1

コミュニケーション力が高く、人柄が良くて主体性があって粘り強い人がいたら、一般的には十分「優秀である」と言えると思います。でもワークスアプリケーションズが求めているのは、そういうことではない、ということなんですね。

この調査でおもしろいのが、企業には「学生に不足していると思う能力/既に身につけていると思う能力」を、学生には「自分に不足していると思う能力/既に身につけていると思う能力」をそれぞれ聞いて、そのギャップを見ている点です。
それによれば、「粘り強さ」や「主体性」「コミュニケーション力」について、企業は必要性と不足を感じているけれども、学生の方はそれほど不足を感じておらず、むしろ「粘り強さ」なんかは既に身についていると思っている、というギャップが見えます。

graph2

graph3

学生時代にサークル活動やバイトなどを「粘り強くやってきた!」と自己評価している若者と、「3年もしないうちに辞めていくなんて、最近の若者は粘り強さがない!」と嘆く中高年の図が、なんとなく思い浮かびませんか…?

想像するに、多くの企業では「優秀な若者=コミュニケーション力が高く、人柄が良くて主体性があって粘り強い」というイメージで、「優秀な人」を採用すればきっと主体性をもって長く働いてくれる、と考えているのではないでしょうか?
「即戦力」という言葉が流行ったりして、最近は教育にコストをかける余裕もなく、自分で勝手に学んで自律的に働く人、というのを求める風潮があるように感じます。
例えばこの記事に出てくる”ほしいのは、「放置プレー」で結果を出せる仲間”という言葉は、それをすごく分かりやすく表しています。(「目標達成しました!」という社員はいらない――「あたらしい働き方」にはまる人、はまらない人
この記事の内容を否定しようというわけではなく、とにかく少数精鋭で突っ走らなければいけないスタートアップ企業が経験者を採用する場合は、そういう方針もありでしょう。でも、どんな会社もこのやり方がベストだとは思えないし、新卒採用の場合には無理のある考え方ではないでしょうか。

牧野氏の話を聞いていてすごいな、と思ったのは、自社にとっての優秀さは徹底して求める一方で、「粘り強さ」のようなことには期待していないというか、むしろ今の優秀な若者に「我慢して働き続ける」といった粘り強さを求めるのは無理なんだ、と考えているところ。そして、だからこそせっかく採用した優秀な人達がやめてしまわないための施策には、かなり手間とコストをかけているというところです。

優秀な人材が「働きがい」を感じる条件とは?

牧野氏によると、優秀な人材が「働きがい」を感じる魅力的な企業の条件は以下の5つだそう。

  1. 社会貢献・代替のない仕事
  2. ごまかしがない、妥協させない
  3. 成長できるフィールド
  4. 正しく公正な評価

これもまあ、一般的に「そうだよね」と賛同の得られる条件だと思います。こういう方針をかかげている会社はいくらでもありそう。
ですが、牧野氏によれば「方針として掲げていても、実際には…」という状態だと逆効果になってしまうそうで、徹底的に実現しようとしているのがワークスアプリケーションズのとんがったところです。

たとえば「ごまかしがない、妥協させない」ということに関して、会社のパンフレットや採用説明会では素晴らしく夢のあるビジョンを語っているのに、入社してみたらそんな仕事はできなかった…、ということになると、今の優秀な若者は「話が違う、この会社は不誠実だ」と辞めてしまう。だから採用前からコミュニケーション方法にはとても気を使っていて、嘘をつかないことはとても重要なのだということです。

また、「代替のない仕事をしている」「成長できるフィールドにいる」と実感してもらうために、簡単な仕事はできるだけ外部に切り出すことや、若いうちから権限を与えてどんどん失敗をさせることを心がけている。失敗に伴うコストは相当かかっているけれども、それによって社員の成長が促されることを重視しているとのことでした。

それから、海外からの採用にも積極的です。これは、人件費が安い国に合わせようということではありません。むしろ新卒の給料も日本の平均より高めだそう。これは、今はインドの有名大学の卒業生を採用するには日本の新卒以上の報酬を提示しなければいけない状況で、公平性を保つために、国によらず同じ評価・報酬体系を採用している結果なのだとか。

他にも、社内のコミュニケーション活性化を担うスタッフや、社内広報専門のチームを設置するなど、とにかく優秀な人を採用して働き続けてもらうためには、手間とコストを惜しまないのです。

しかしこれらの施策は、これだけの手間とコストをかけてでも、優秀な人に働いてもらうことでより大きなリターンがあるという、この会社に最適化したものです。

それぞれの組織ごとに、どんな人材が必要で、そのような人に来てもらうためには、やめないで続けてもらうためには、どういう方法があるのか、それを柔軟で大胆な発想で考えていく必要がある、牧野氏の話からはそういうメッセージを受け取りました。

「クリエイティブな仕事」というとお客さん向けのサービスや商品の開発や宣伝をイメージしがちですが、その元となる人材採用・教育って、とってもクリエイティブで面白いものだな、ということに気付かされるお話でした。

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