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「【地域xIT】話題の徳島でいま一体何が起きているのか?ITの力で地域はどう変わるのか?」イベントレポート

2013/09/24   更新:2018/11/30

9月11日(水)に東京・渋谷にて『【地域xIT】話題の徳島でいま一体何が起きているのか?ITの力で地域はどう変わるのか?』が開催されました。

「My Desk and Team」の取材スタッフとして参加した宅美さんからの、レポートです!

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今回イベントに参加する際にあたって、いくつかの疑問が頭に浮かんだ。

「なぜ今地方を選ぶのか?」「実際に選んだ結果どうなったのか?」そして「どういう人が地方でこそ力を発揮できるのか?」という点である。 今回登壇した5名はいずれも実際に徳島県で働いている、あるいは徳島を活動の拠点として携わっている人物だ。

様々な施策を経て、企業の誘致や地域の活性化に成功している徳島の事例をもとに、企業、そして働く個人にとっての「地方」という選択肢の可能性を考えたい。

■ 登壇者の紹介

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・株式会社たからのやま 取締役副社長 finder主宰 本田正浩氏
http://fin.der.jp/

・株式会社ウィズグループ 代表取締役、株式会社たからのやま 代表取締役 奥田浩美氏
http://www.wizgroup.co.jp/

・Sansan株式会社 CC本部 コネクタ兼Eightエヴァンジェリスト 日比谷尚武氏(神山町)
http://www.sansan.com/

・サイファー・テック株式会社 代表取締役 吉田基晴氏(美波町)
http://www.cyphertec.co.jp/
http://www.cyphertec.co.jp/minami/

・徳島県東京本部 副本部長 新居徹也氏
http://www.pref.tokushima.jp/soshiki/tokyohonbu/

■ 日本の田舎を目指すことで世界の最先端を垣間見られる

本田氏はもともとIT系メディア TechWaveを創業し、多くのスタートアップ企業の動向を取材する立場にいた人物である。

当時、そして今なおIT関連の最前線の事例として度々取り上げられるのは、アメリカのシリコンバレーを発端とする独自の文化や思想である。

シリコンバレーといえば多くのテクノロジー・IT関連企業の一大拠点として有名であるが、本田氏は日本でシリコンバレーを理想とする世界を目指すのではなく、別の角度からのITの活用を考えたという。

そこで目を向けたのが地方の地域である。

地方の地域の現状といえば、高齢化や防災・減災といった多くの課題が山積している。しかし、これらの課題はいずれも世界で初めて日本が経験する分野の課題であり、つまり地方の地域の課題解決を目指すことこそが、世界でも前例のない最先端の課題を解決することに繋がるのだと考えている。

「のんびりしたくて地方に行くわけではなく、勝負をかけたくて地方に行った」

本田氏の一言が強く印象に残った。

■ 社員がみな元気に。そして仕事だけではなくなる

徳島という地域にサテライトオフィスを設置し、様々なメリットを実感しているというSansan株式会社の例を取り上げたい。

日比谷氏によると、2010年に偶然出会ったNPOグリーンバレーで代表を勤める大南氏との出会いが大きなきっかけだという。

先見性のある大南氏の話に大いに感銘を受け、FacebookやGoogleといった先進的な企業の働き方を実現すべく、その中の施策の1つとして徳島という地域にサテライトオフィスを設置した。

同社では2010年10月より築70年の古民間を再利用したサテライトオフィス「神山ラボ」を設置している。

主な用途としては、プロジェクト単位での短期的な合宿や2週間の新入社員研修、2週間から1ヶ月程の期間を社員1〜2名で滞在するといった使い方をしている。

「社員がみな元気になって帰ってくるんです。環境の良さや規則正しい生活はもちろんですが、仕事だけではなくなるんですよ。」と日比谷氏は語る。

「神山ラボ」のある神山町では、都会の様に近くを歩けばすぐにコンビニが見つかるという環境ではないため、仕事の合間をみて買い出しに出向き、自炊をする必要が出てくる。

また地元の人たちと接する中で、人情味あふれる交流や人と人との絆を強く感じられる機会に多く遭遇する。

こういった地方の都市ならではの生活を体感することで、本来の生活リズムを取り戻し、心身共にリフレッシュし戻ってくる社員が非常に多いのだそうだ。

■ 職と暮らし、趣味を近づけることで「半X半IT」を実現

地方の都市ならでのメリットということであれば、吉田氏が代表を勤めるサイファー・テック社の話も魅力的だ。

徳島県美波町にある同社の「美波Lab」は、敷地内に畑、徒歩数十秒の距離に水田があり、シーカヤックやスキューバダイビングのスポットも点在しているという豊かな自然環境下にある。

「半X半IT」を掲げる同社のスタッフは仕事の傍ら、休日や出勤前、休憩時間を利用して、米作りやサーフィン、ハンティングなどを満喫している。

「職」と「暮らし」「趣味」の距離を徹底的に近づけることで、この土地ならではの生活スタイルが得られた。

(※「半X半IT」という言葉は、「半漁半IT」「半猟半IT」といったように「X」のところに個人によって異なる1文字が入り、個人による「何か=X」と本業のITワークを高い次元で両立させる働き方のことを指します。塩見直紀著の「半農半Xという生き方」等によってこの言葉が広まり、今回はその中で登場する「半農半X」という言葉から派生し、作られた言葉だと推測されます。なお「半農半X」という言葉の生みの親は作家・翻訳家の星川淳さんということが、潮見氏より直接述べられています。(参考 http://shumiyuyu.kaiteki-jinsei.jp/17/01.html

■ 「掛け算を起こせる人たち」が求められている

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最後に、どういう人が地方でこそ力を発揮できるかという点に関して言及していきたい。

この点に関しては実際にイベント当日に、会場から出た「今後どういった人たちと一緒にやっていきたいか?」という質問に対する吉田氏の回答が参考になる。

地方には何も無いのではなく、多くのものや魅力的な人が存在しているが、なぜか上手くいっていないことが多い。ITと漁業のように、地元の特性を最大限に活かし、そこに何かを組み合わせることで新しい価値を生み出すことが出来る、そんな人物が求められている。

また「若者一人の価値が東京と徳島ではまるで違う。」と新居氏は語る。徳島では若者が一人で歩いていれば挨拶され、何かと頼りにされるのだという。

複数の登壇者の話の中でも触れられたが、“意識は高いが都会でうまく力を発揮出来ていないような若者”に関しても、場合によっては地方の方が、本来の力を十分に発揮する可能性もあるということも述べられていた。

いずれにせよ、地元の環境への理解と地域の人々への尊敬の心、そして課題の解決に貪欲に取り組む姿勢があれば、地方の地域がこれまでに無かった新しい価値を生み出す場として、今後も注目を浴びる可能性は大いにあるだろう。

☆☆ 取材・文・撮影/宅美 浩太郎

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