My Desk and Team

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社員の成長を徹底的にフォローする会社

2013/04/01   更新:2018/11/30

building
横浜市にある向洋電機土木株式会社は、屋内外の電気設備の設計・施工を専門に行う従業員数27名の会社である。

建設業・土木業の会社に対する一般的なイメージは(失礼ながら)「3K(きつい、汚い、危険)」に代表されるような泥臭さがあり、「新しい働き方」とは縁遠いと思われる方も多いのではないだろうか。

震災復興需要で建設業の求人は増えているが、就職希望者は少なく、昨年11月時点で建設業の有効求人倍率は約2倍というニュースもあった。

だが向洋電機土木株式会社では、毎年1,2名の新卒採用に対し、ここ何年かは何十倍もの学生から応募があるのだそう。

その理由のひとつは、同社が横浜グッドバランス賞テレワーク推進賞優秀賞といった表彰を受けたりNHKの『クローズアップ現代』のテレワークについての回で紹介されたりと、「働きやすい・働きがいのある職場作り」を目標にした取り組みで注目される企業であることだろう。

向洋電機土木株式会社の職場変革

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総務部課長 横澤昌典氏

以前「社員を大事にし、変化させることのできる会社は強い」にも書いたが、同社の働き方の変革は、現在総務部課長の横澤さんが、4年前に全くの異業種から中途入社して以来、強力に推進してきた。

もともと社員を大事にした経営をしたいと考えていた同社の社長が、業界の慣習にどっぷり浸かっている人よりも外から来た人の方が変化を起こせると見込んで、横澤さんをスカウトしたのだそう。

その結果、同社では定時退社や有休取得推進、時短勤務、出産・育児休業、介護休業、在宅勤務等々の制度が充実し、この4年で社員の子どもが9人も増え、男性の育児休業取得者も多い、というのは上の記事でも書いたとおりだ。

もうひとつ注目すべきは、同社が柔軟な働き方の制度実現と同時に、「人材育成」に並々ならぬパワーをかけていることだ。

例えば、社員のみならず協力業者まで巻き込んだ資格取得支援を行い、平成20年度以来、各種免許・資格の合格者を累計200名以上排出しているという。

この点において、同社の支援がどれだけ徹底していて、それがどんな効果を生み出しているのか、社員のJさんに聞いてみた。

会社主催の資格取得講習会

残業をしないで定時退社するということも同社で推進された変革のひとつ。情報の整理と一元化やファイリング方法の標準化など、業務の無駄をなくし効率を上げるために様々な工夫をした結果、できるようになったことだそうだ。

残業をしないで定時退社するということも同社で推進された変革のひとつ。情報の整理と一元化やファイリング方法の標準化など、業務の無駄をなくし効率を上げるために様々な工夫をした結果、できるようになったことだそうだ。

Jさんは横澤さんと同じ総務課で、経理処理、社員日報や勤怠記録の集計と給与計算、電話や来客の応対などを担当している。家庭では17歳と20歳のお子さんがいて、会社の新人に対してもお母さんのような気持ちで接することが多いという、優しそうでかつ芯の強そうな40代の女性だ。

Jさんは毎日8時40分頃から業務を開始し、年度末などの繁忙期を除けばほぼ残業なしで、17時半に業務を終える。そして時々、業務終了後に「資格取得講習会」に参加する。

この講習会は同社が主催し、月に2、3回、社内会議室や地区センターなどで行われる。協力業者の社員も参加し、みんなで資格取得のための勉強をするというものだ。

社会人になると、たとえ仕事に必要なことであっても、日々の忙しさにまぎれてなかなか勉強を続けることが難しい。Jさんも、仕事と子育てを両立しながら勉強も、というのはハードルが高かっただろうと思われるが、この資格取得講習会のおかげで勉強の習慣が身についたという。

また、この講習会は勉強習慣が身につくだけでなく、合格に結びつく効果がとても高い。通常2割程度の合格率の資格でも、この講習会に参加すると8割が合格できたりするのだそうだ。Jさんも、みごと建設業経理士2級を取得。現在は1級の科目合格をして引き継続き勉強中だ。

高い合格率の秘密

interview

それぞれ目指す資格が異なるため、講習会といっても一斉に講師の話を聞くという形ではない。

集まった場で個々に勉強するのが基本だが、同じ資格を目指す者同士が教え合ったり、目標の資格をすでに取得した人に教えてもらったりと、互いに協力しあう場にもなっている。

また、常にこの会場にいる横澤さんが教師役となり、質問に答えたり、勉強の進め方をアドバイスしたりもする。

各自が目指す資格は非常に幅広いが、横澤さんは様々な資格の勉強の相談に乗れるよう、皆に先んじて勉強し、オリジナルの練習問題まで作成する。

以前は全く違う業界で働いていたので、当然、勉強を始めたのは今の会社に移ってから。なみなみならぬ努力があったことが伺える。

そんな横澤さんの行動は、最初の頃は「資格取得なんて無理」と挑戦したがらなかった社員を奮起させる効果もあったようだ。

また、様々な資格に必要な勉強内容や資格取得条件を熟知していることが、ひとりひとりにあった効率的な形で、スキルアップの計画を立てることを可能にしている。

例えば、建設業経理士の資格をとったJさんは、今年ファイナンシャルプランナーの資格も合格し次に目指すのは社会保険労務士という。それは、Jさんの場合、建設業経理士の勉強で身につけた知識がファイナンシャルプランナーの取得に利用でき、その集大成として社会保険労務士取得というキャリアプランが組まれているからなのだ。直接業務に必要ないかもしれないが、将来的に幅広く活かせる可能性のある資格であることなど、横澤さんからのアドバイスがあったからだそうだ。

他の社員に対しても、個々の学歴や業務経験などによって、◯◯さんはこちらの資格から挑戦したほうが効率的、これが取れたら次はこれが取りやすい、といったアドバイスをしながら、ひとりひとりの計画を横澤さんが一緒に立てていく。

その上で、オリジナルの練習問題で定期的に勉強の成果をチェックし、フォローをしていく。

高い合格率の理由のひとつは、このような個別の手厚いフォローにあるのだ。

通常このような資格を独学で取ろうと思えば、参考書や通信教育の費用がかかるが、勉強にかかる費用は会社もち、その他資格取得のための助成金の申請なども会社が代行してくれる、そのうえ予備校以上に手厚いカウンセリングが受けられるということで、社員にとってはとてもありがたい支援と言えるだろう。

モチベーションのあがるしくみ

とは言え、仕事が終わった後の時間をつぶして勉強をするのはやはり大変だ。がんばる気持ちはどこから出てくるのだろう?

Jさんにとって資格をとるということは、会社のためでもあり、最終的には自分のためでもあるという。

会社のためというのは、個々の社員のスキルが上がればサービスの質向上や幅が広がるということもあるし、公共事業の入札参加の際に必要な「経営事項審査」では特定資格の保持者の数が加点対象になるので、業績に対する貢献意識も生まれる。

自分のためというのは、現在の業務に活かせる、給料が上がるということはもちろん、もし将来転職するようなことがあってもスキルが評価されやすいという長期的な意味もある。

こういった「何のためにがんばるのか」という考え方も、ここ何年か、社長や横澤さんが朝礼や個別の面談の場でじっくりと伝えてきた結果、徐々に浸透してきた。その結果、みんながそれぞれの目標に向かって一丸となって頑張っていると感じられる、良い雰囲気が出てきたと、Jさんは感じているそうだ。

社員同士の仲もよく、週末の社員旅行には、現場作業の調整をつけて全員参加する。またクラブ活動も活発で、特に最近は野球部の活躍が目覚ましい。

社員同士の仲もよく、週末の社員旅行には、現場作業の調整をつけて全員参加する。またクラブ活動も活発で、特に最近は野球部の活躍が目覚ましい。

社員重視が社員の戦力化につながる

最近では、ワークライフバランスの実現を目標に、多くの企業が様々な制度を導入している。一方、不況で教育に時間やお金をかける余裕がなく、人材には即戦力を求める企業が増えている。

向洋電機土木株式会社では、ワークライフバランスと人材育成のどちらも強力に推進していて、そこにかけている労力は他社と比べてもかなり極端なレベルと言ってよさそうだ。

雨の日以外は現場に出ている社員が多く、事務所内はガランとしていることが多い。社長と横澤さんが現場に出向いて社員の個別面談をすることも有るそうだ。

雨の日以外は現場に出ている社員が多く、事務所内はガランとしていることが多い。社長と横澤さんが現場に出向いて社員の個別面談をすることも有るそうだ。

ワークライフバランスに関しては、ひとりひとりの家族構成やライフステージによって理想のバランスの取り方、そのために必要な制度は異なる。だから、用意された制度を何でも使えば良い、というものではない。同社では、個別(時には配偶者も呼び出して!)のコーチング、カウンセリングなどをかなりじっくり行い、制度をひとりひとりのニーズにマッチした形で活用できるようにしている。

資格についても、単に「資格を取りなさい」言うだけでは社員は動かないことが分かっているからこそ、勉強の計画を立て、必要な申請書も準備するなど、手取り足取りお膳立てをする。そうやって社員がやらざるを得ない状況を作ることで、多数の合格者排出という実績をあげているのだ。

横澤さんいわく、多くの会社はワークライフバランスのための諸制度が定着することを目標にしている。しかし、定着するだけでは意味がなく、それが社員の戦力化につながることが真の目標であるはずだ。

社員重視の経営と人材育成が、個々の社員の戦力化、すなわち会社の成長につながるという信念があるから、同社は徹底的にやる。社員の方もそれに手応えを感じ、自分を、そして会社をもっと良くしていこうという気持ちを持つ。横澤さんとJさんのお話から、会社と社員の間にそのような好循環が回り始めていることがうかがえた。

取材・文/やつづか えり 撮影/岩間 達也

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