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「サイボウズ&メルカリ ユニークなアイデアで女性の活躍を推進しよう!」ワタシクリエイトCAMP SPRING. 2016 参加レポート

2016/04/22   更新:2018/11/30

「ワタシクリエイトCAMP SPRING.2016」会場

「自分の生き方・働き方を自らクリエイトする」をテーマに、働く女性に向けたさまざまな切り口でのワークショップやセッションが4日間にわたり催された「ワタシクリエイトCAMP SPRING.2016」。最終日に行われたセッション「サイボウズ&メルカリ ユニークなアイデアで女性の活躍を推進しよう!」に参加してきました。

会社が従業員を縛るためのものというイメージの強い就業規則ですが、「従業員が自分らしく楽しく働くための就業規則があってもといいのでは?」と、ワタシクリエイトを主催する株式会社エモーヴ代表の井尾さわこさんが感じていたことから実現した、今回のセッション。

ゲストスピーカーは、サイボウズ株式会社で広報を担当、同社のオウンドメディア「サイボウズ式」の編集部員でもある渡辺清美さんと、株式会社メルカリで労務を担当し、人事制度「merci box」を作った手代さやかさんのお二人。それぞれの会社のユニークな人事制度と、そこから見えてきた女性活躍推進のヒントについてお伝えいたします。

右から、株式会社メルカリ 手代さやかさん、サイボウズ株式会社 渡辺清美さん

右から、株式会社メルカリ 手代さやかさん、サイボウズ株式会社 渡辺清美さん

100人いれば100通りの人事制度があってよい。多様性に寄り添うサイボウズの人事制度

まず、渡辺さんからサイボウズの人事制度についてのご紹介。グループウェアの提供により大小さまざまな組織・チームの柔軟な働き方を可能にしている同社は、自社においても多様な働き方を可能にするユニークな人事制度を持っていることでも有名です。また、子育てをしながら働く女性のリアルな日常を描いたワークスタイルムービー「大丈夫」や、その第二弾として共働き夫婦の葛藤を夫の視点で描いた「」が話題になるなど、働き方に関する問題提起を積極的に行っている企業としても注目を集めています。

そんなサイボウズ社ですが、以前は長時間労働が当たり前の風土だったそうです。離職率も高く、現在のイメージとは全く異なる状況でした。「起業するために辞めるという人もいましたが、生活とのバランスがとれずに辞めていく社員もいました」(渡辺さん)

そうした状況に危機感を抱き、2005年に現在の社長に変わってから人事制度を増やしていったそう。まず着手したのが、育児休暇の長期化。育児休暇は最大6年間取得可能とし、男性・女性問わずとることができるように。また、妊娠したことがわかったらいつでも産休をスタートできる制度も併せて整備しました。

さらに2007年から、選択型人事制度を開始。社員がライフイベントに合わせて働き方を変更できる制度です。当初は、働く時間を軸に「時間に関係なく働く(PS2)」「少し残業して働く(PS)」「定時・短時間で働く(DS)」の3種類。2014年からは、この時間という軸に加えて働く場所という軸も取り入れ、9種類に増やしました。

サイボウズ株式会社 コーポレートサイトより

サイボウズ株式会社 コーポレートサイトより

また、在宅勤務制度は2010年から開始。それをさらに発展させたのが、2012年に導入されたウルトラワークです。これは、9種類のどのワークスタイルを選択している人でも、単発で時間・場所にとらわれない勤務をすることができるというもの。その方法も至ってシンプルで、「ウルトラします」と上司に伝え、許可をとるだけ。突発的な状況にも対応しやすいというメリットがあります。

特徴的なのは、選択型人事制度やウルトラワークなど多様なワークスタイルを選択できる制度が、育児や介護などに限らずどんな理由でも利用できるという点。例えば選択型人事制度は、「大学院に通うので短時間勤務をする」「副業制度を利用して他の会社で働くのでサイボウズでは週4日勤務」といった使い方も可能。ウルトラワークも、「愛媛に旅行にいくので、松山オフィスのラウンジで働きます」といった活用事例もあるといいます。

ここには、同社の「多様性」に関する考え方が表れています。それは、「育児中の女性」や「外国人」といったわかりやすいものだけではなく、すでに今いる社員の中にも多様性があるという考えた方。「100人いれば100通りの人事制度がある」というモットーを掲げ、一人ひとりに寄り添う人事制度を目指しているのだそう。My Desk and Teamでも以前ご紹介した“育「自分」休暇”や、副業の解禁など、個々の意志を尊重し応援する制度にもそうした思いが表れているように感じます。

「Go Bold」に思いきり働ける環境をつくる。社員へのありがとうを形にしたメルカリの人事制度

日米で合計3400万ダウンロードされているフリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリ。2016年2月に「産休・育休中の給与を100%保障」という人事制度を発表し、話題をさらいました。

merci boxについて話すメルカリ手代さん

その制度を含んだ複数の人事制度をまとめたものが、「merci box」です。merciはフランス語でありがとうという意味で、メルカリ(mercari)のアルファベット表記と途中まで同じ。浸透させるために、覚えやすくユニークな名前にしたそうです。boxは、メルカリのサービスロゴが箱をモチーフにしたものであるということと、今回導入したもので完成なのではなく、これからも新しいものを詰めていくという意味もこめて名づけられたとのことです。

その名のとおり、いくつもの制度がパッケージングされているmerci box。産休・育休中の給与保障だけでなく、介護に従事する社員に対するサポートや、本人が病気や怪我などで働けなくなった時や、万が一死亡した際の保障も導入。これまであった慶弔関係の規定も見直し、休暇日数やお祝い金・弔慰金を増やしました。

こうした保障を手厚くしたのは、住宅手当や食事補助などアップサイドの手当を手厚くするよりも、ダウンサイド、つまり不安に思ってしまう部分や誰にでも起こりえるリスクに対しての会社としてのサポートをしたい、という思いがあるからだそう。「当社が大切にしているバリューの一つに『Go Bold(大胆にやろう)』というものがあります。社員の不安をできるだけ少なくし、『Go Boldに思いきり働ける環境』をより充実させていくために、merci boxを作りました」(手代さん)

ちなみに、産休・育休中の給与保障は社員の立場から見るととても有り難い制度ですが、一方で経営視点で考えると「復職しなかった場合のリスクは?」「休職中に給与支給があるとみなされてしまうと、給付金を減らされてしまうのでは?」などの点が気になるところですが、この点に関してもしっかり考慮されているようで、復職後に賞与として支給する予定とのこと。復職してくれた社員に「ありがとう」の気持ちを込めて支給する、という意味でも、merci boxのコンセプトに合っているように思います。

社員の働きやすさを実現する制度は、会社を強くすることにもつながる

こうした手厚い保障や福利厚生を導入している事例を聞くと、「経営に余裕があるからできるのでは?」という疑問を持つ人もいるかもしれません。しかしこれに対しては、両社とも「こうした制度の実施は、経営コストの面でもメリットがある」と回答。会社のことや業務に精通した社員が働き続けてくれることで、新たな人材の採用コストや育成コストが削減できるため、人事制度を運用することでコストがかかっても、結果的にはそちらの方が安くつくというのです。

サイボウズ社は高い離職率という経営課題があり、その解決のためにさまざまな人事制度を作っていきました。その結果、2005年には 28%だった離職率を、2015年には4%にまで低下させることに成功しました。一方でメルカリ社は、現時点では課題として表面化はしていないものの、今後を見据えて先手を打ったかたちです。ビジネスモデル上、カスタマーサポートに従事する社員が多く、その半数以上が女性。年齢的にもこれから出産をするケースが多く出てくることが予想されるといいます。

また、社員のライフイベントや意志をサポートする制度は対外的にも注目されており、副次的な効果も出ているそう。まずは採用面での効果。サイボウズ社では、10年前はほとんど新卒が採れないという課題がありましたが、ブランディング効果により応募数がアップ。また、副業可能な環境や柔軟に働ける環境を求めて、市場価値の高い人材が大手企業から転職してくるようになるなど、目に見える変化が出ているそうです。メルカリ社では、まだ発表から日が浅いということもあり、具体的な数字としては表れていないそうですが、応募者、とくに男性から育児休業取得事例などの質問がよく出てくるようになったそうで、関心の高さがうかがえます。

さらにサイボウズ社においては、こうした企業イメージの変化が事業面でもプラスに働いているそう。多様な働き方を受け入れるためには、サイボウズ社が提供するようなクラウド型のコミュニケーションツールが欠かせません。そのため、「働き方に関する先進企業」というブランディングが事業推進の追い風になっているとのことです。

大事なのは風土づくり。経営トップや男性が率先して取り組むことも効果大

こうした制度を作ることは大きな一歩ですが、それよりも大事なことは、それらがしっかり浸透し活用されること。制度はあっても利用しにくいという状況になってしまえば、逆効果にもなりかねません。渡辺さんいわく、「多様な働き方を実現するためには、『ツール』『制度』『風土』が不可欠」とのことですが、風土づくりに関しては両社とも特に力を入れているといいます。

風土づくりについて話すサイボウズ渡辺さん

例えば育児との両立に関しては、サイボウズ社では社長が育休を取得。その体験から「育児は人類最大の仕事だ」と感じたとのことで、自らメッセージを社内に発信するようになったそう。昨年第三子が生まれた際は、半年間16時に退社し、現在も基本的には定時で退社するなど、自身が率先してワークライフバランスの向上に取り組むことで、社員も取り組みやすい雰囲気を作っているのだそうです。

メルカリ社でも、これまで朝早くから出勤していた役員が、育児に参加してから定時に出社するようになるなど、経営陣が率先して社内の雰囲気づくりに取り組んでいるといいます。また、男性の育休取得があまり進まない理由の一つに、収入が大きく減ってしまうということが挙げられますが、育休中も給与が100%保障されるのであれば、男性も取得がしやすくなります。すでに、merci boxの制度を使って育休を取得予定の男性社員が複数名いるそうで、このことも社内の盛り上がりに一役買っているそう。男性の育休取得率が上がることは、社会全体としての女性活躍推進にとってプラスになりますが、自社内にもよい影響があるようです。

女性は子どもが生まれることがわかりやすいですが、男性はなかなか周囲に伝わりません。育休をとることで「あの人パパになるんだ」と社内に伝わりやすくなり、お祝いムードが高まるんだとか。両社とも、子どもが生まれた社員には、会社のロゴが入ったベビーウェアを贈るのが慣習になっているそうで、そのように男女問わずウェルカムムードがあると、女性だけが引け目を感じることなく、例えば妊娠した際の報告なども、しやすくなるのかもしれないですね。

おわりに

「ワタシクリエイトCAMP SPRING.2016」会場の様子

「ワタシクリエイトCAMP SPRING.2016」会場の様子

本セッションのタイトルは「ユニークなアイディアで女性の活躍を応援しよう!」でしたが、サイボウズ社の「100人いたら100通りの人事制度」の言葉が象徴するように、両社とも女性に限らず社員一人ひとりに寄り添い、サポートすることを目指した制度であったことが印象的でした。

いわゆる「女性活躍」を目指した取り組みを行っている企業は多いと思いますが、「女性」や「子育て」などと意識しすぎずに考えることで、結果的には女性も含めたすべての人が個々の事情や意志に合わせて柔軟に働きやすくなるのではと思いました。

そして、そんな働き方ができる制度や風土がある会社であれば、社員が長く意欲的に働いてくれ、結果的には会社にとっても大きなメリットがあります。まさに、「組織と個人のより良い関係」を体現している2社の事例であったと感じました。

☆☆
取材・文/伊藤 かおり 撮影/Mai Sakai、伊藤 かおり

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