My Desk and Team

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妻の故郷・鹿児島にIターン。働き方の選択肢が広がれば、地方にもたくさんの仕事がある。

2016/04/13   更新:2018/11/30

嶋田貴文さんは、北海道の函館出身。大学卒業後に上京して働き始め、ずっと東京にいるつもりで家も建てたが、3年前、あるきっかけから鹿児島霧島市に移り住んだ。現在は株式会社ecommit(エコミット)という、鹿児島に拠点を置きながら、グローバルなシステムで環境問題の解決に挑むベンチャー企業の人事を担当している。

新しい場所でイキイキと活動する嶋田さんに、移住後の生活や仕事、移住者の視点で見えてきた今後の展望について伺った。

嶋田貴文さん

Profile

嶋田 貴文 Shimada Takafumi

株式会社ecommit 管理部 人事・総務チームディレクター
1979年、北海道函館市生まれ。函館大学卒業と同時に上京し、警備会社の社員として警備業務に従事。職場の安全衛生委員となったことから人事業務に興味を持つ。その後(株)アデランスの人事部で人事業務全般、レジェンダコーポレーション(株)にて金融系会社の人事部のフルアウトソーシングを経験し、2013年4月に妻の実家がある鹿児島県霧島市へ移住。システム開発会社の総務・人事担当を経て、2015年10月にecommitに参画し、現在に至る。
モットーは、”楽しく生きる”。

仕事や家庭の状況がきっかけで移住・転職を決意

嶋田さんが当時勤めていた会社を辞め、東京を離れる決断をしたのには、ふたつの要因があった。

ひとつは嶋田さんの仕事の状況だ。当時、企業の人事業務のアウトソーシングを請け負う会社で、新たなプロジェクトの立ち上げメンバーとして奮闘していた。会社としても初めての大きな案件で、6時半の電車で出社して終電まで働き、土曜日も出社という毎日だったという。また、共働きで育児にも手がかかる時期に家庭の事情も重なったことも、仕事や暮らしの環境を大きく変えようと考えるきっかけになり、嶋田さんは「仕事辞めて、鹿児島に戻ろうか」と妻に提案した。

「東京で家も建てていたので、彼女は『家はどうするの? 仕事は?』と驚いていましたけど、なんとかなるだろうと思ったんです」

妻以外に鹿児島を知る人からも、「鹿児島に来ても仕事がない」と反対され、嶋田さんも不安がなかったわけではない。それでも東京に比べれば物価も下がるし、暮らしやすそうな土地だからなんとかなるだろうと思ったという。

「今にして思えば、妻の地元の鹿児島県霧島市という場所が良かったのかもしれません。故郷の函館に似ているんです。函館では日常的に山が見えて、津軽海峡の海もある。空港や温泉が近い。霧島市の方は桜島が見えて、錦江湾があって、やっぱり空港が近くて温泉もある。初めて行った時に『あっ』と思って、なんだか体にストンと馴染むような感覚があったんです」

当時住んでいた東京では、そのような安らぎを感じられなかったという嶋田さん。激務や家族の状況は直接のきっかけにはなったが、実はそれ以前から、生活環境を変えたいという思いがあったのかもしれない。

「夫婦共働きで生活にゆとりがないなと感じていて、地方で両親も近いところだったらやりやすいんじゃないかというのもありました。そういう意味では函館でもいいのですが、僕は新しい場所での人付き合いも苦にならない方なので、嫁の実家に近いところの方がやりやすいかなと」

嶋田さんは昨年、妻の両親宅から徒歩1分の場所に家を建てた。両親には毎日食事を分けてもらったり、子どもが熱を出したりしたときには面倒を見てもらったりと、とてもお世話になっている。両親の方も、それまでは二人暮らしで寂しかったところ、毎日孫に会えるようになり、小学校の行事にも出られたりして、とてもイキイキしている。両者にとって「いい暮らし」が実現できているそうだ。

庭の畑仕事を終え、ウッドデッキで休憩する妻と娘

庭の畑仕事を終え、ウッドデッキで休憩する妻と娘

田舎では珍しい在宅勤務ありの働き方

嶋田さんは移住してすぐ、妻も3ヶ月経つ頃には地元の仕事を見つけた。ふたりとも、それまでの経験やスキルを活かせる職種だ。

嶋田さんは以前、人事のスペシャリストとして複数の会社を渡り歩いてきた上司に出会い、自身も人事のプロとしてやっていこうと考えるようになった。鹿児島でも人事担当者を募集している会社を探し、最初は社員数100名くらいのソフトウェア会社に入社。しかし、経営者と考え方が合わずフラストレーションを感じていた時に、知人から現在のecommitを紹介されたそうだ。

イベントでecommitのビジョンについて説明する嶋田さん

イベントでecommitのビジョンについて説明する嶋田さん

「前の会社はそれほど忙しくなくて時間を持て余していたところもあり、鹿児島で行われるイベントにいろいろ顔を出していたんです。その中で知り合った人から、ecommitという会社が人事経験者を必要としているという話を聞きました。それで、まず社長と会い、話をして好感を持ちました。その後会社を見せてもらいに行った時、ちょうど『日本仕事百貨』の取材があったんですよね。取材に同行して色々話を聞いた結果ビジョンに共感し、昨年10月に入社しました」
(その時の取材を元にした記事がこちら:未来への循環 « 日本仕事百貨

ecommitはまだまだ若いベンチャー企業。人事制度の整備もこれからという段階で、嶋田さんには「ゼロからイチを作る」という役割が求められている。大変ではあるが、良い勉強をさせてもらっていると感じているそうだ。

そんなわけで忙しい毎日だが、嶋田さんは早めに帰宅して家族との時間も取りつつ、仕事をこなしている。

「今の会社は、子どもの病気などで出勤が難しい状況のときは家で仕事することも可能なので助かってます」

ecommitでは企業理念としてダイバーシティを推進していこうとしており、勤務形態も働く人の事情に応じて柔軟に対応できるしくみを作っていきたいと嶋田さん。だが鹿児島全体で見ると、まだそういう働き方の存在を知らず、「会社に来ないなんてあり得ない」という感覚の人が多いそう。それには、従来のやり方に疑問を持つ機会が少ないということの他に、近距離通勤者が多いという理由もあるのかもしれない。嶋田さんは、採用活動をしていて感じる東京と鹿児島の違いを次のように語る。

「東京だと『やりたいこと重視』で仕事を選ぶ人が多いですが、ここでは皆さん通勤のしやすさを重視します。薩摩川内市だと、10分から20分位で通勤できるところがいいという人が多いですね。鹿児島市の会社となると、市内は土地が高いので隣の市から通うという人も多いですけど、それでも近いですよね」

そんな中、嶋田さんは電車と九州新幹線を乗り継いで1時間半ほどかけて通勤している。鹿児島では珍しい長距離通勤だが、座って行けるので、東京に比べたら断然ラクだということだ。

移住者を呼び込める新しい働き方を提案していきたい


若い世代が地方への移住を考えた時、課題になるのは「仕事があるか」と「地域に溶け込めるか」いうことだろう。仕事については、在宅勤務、テレワークといった新しい働き方が認められるようになればもっと移住しやすくなる。いずれは企業に対してそういう提案もしていきたいと嶋田さん。

「例えば、最初は東京から遠隔で働きながら徐々に移住の体制を整え、最終的には鹿児島に来るということができると面白いですよね。すでに移住してきている人についても、毎日出社しなくてもいい、みたいな柔軟な働き方が認められれば、スキルを活かせる仕事はいくらでもあるはずなんです。鹿児島には中小合わせて2万くらい会社があるんですからね」

地域での生活に関しては、嶋田さんは義理の両親という接点があったから良かったが、全くの新参者には入って行きにくい雰囲気があるそう。嶋田さんは自分たち家族が移住者と地域の接点になることで、もっと若い世代を呼び込みたいと言う。

「この地域も高齢化していて空き家が多く、『あと10年後にはどうなっちゃうんだ』という危機感があります。だから移住者を呼んできたいです。空き家をちゃんとリノベーションして、僕らみたいな家族が移住者と地域との接点になって、あとは仕事のあっせんができたら、結構人が来るんじゃないかと思うんです」

逆にこれらの課題がクリアされれば、鹿児島はとても魅力的なところ。嶋田さんの場合、収入は東京時代の半分になったが、とても満足して暮らしているという。

「みんな人柄が良くて、海も山も近く、温泉もある。農家が多くて皆さん作物を分けてくれたりするので、お米を買うことってないんですよね。肉も魚も新鮮で、水も美味しい。ずっと住んでいる人は気づきませんが、鹿児島ってすごくポテンシャルが高いところです」

移住を考えたら、まずはその地域の人とつながること

嶋田さんは、住んでいる場所の自治会や小学校の保護者会などを通じ、ますます地域との関り合いを深めている。今年3月には、「子ども達とその親達に、地域の魅力的な大人を知ってもらいたい」と霧島市在住の6人の職人 (木こり、薩摩切子、助産師、日本語教師、ダンサー、ハウスメーカー営業)を呼んで、おしごと体験のイベントを企画・実施した。当日は150人の小学生が集まり、大盛況。8月には第2回も開催予定だそうだ。また、この4月からは小学校のPTA副会長に。「生徒・保護者・先生・地域を繋ぐことで相互が楽しく暮らせるよう、何か仕掛けたい」と語る。
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最後に嶋田さんに、地方への移住を考えている人に何かアドバイスを、とお願いした。

「地方の人は、知らない人をあまり受け入れたくない、怖い、という気持があるかもしれません。でも今は、移住を支援する団体や活動もたくさんあるので、そういうところを見つけてうまく使うのがいいですよ。『地域おこし協力隊』のような制度を使うのも良さそうですね」

「まずはそこに行ってみて、地域の人と話をするのが大事」だと嶋田さん。「鹿児島だったら僕がつなぎますよ。連絡ください」と頼もしい笑顔を見せてくれた。

☆☆

取材・文・撮影/やつづか えり(自宅写真は嶋田さんより提供)

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