My Desk and Team

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八ヶ岳のふもとで理想の働き方に挑戦「好きなヒトと、好きなバショで、好きなコトを」

2016/03/02   更新:2018/12/10

昨年4月、東京のIT系スタートアップで働いていた20代のエンジニア達が立ち上げたIREMONO。

彼らのオフィスはスタートアップが多く集まる東京の渋谷…ではなく、八ヶ岳の麓の長野県富士見町だ。

loghouse

IREMONOのオフィスとメンバーの住居を兼ねるログハウス。

元はカフェだったというログハウスは、IREMONOのオフィスであるとともに、メンバーの生活の場でもあり、仕事のパートナーであるエンジニアやライターたちが集う場所にもなっている。彼らが東京を離れて起業した理由、目指す組織のあり方や働き方について聞いてみた。

左から、CCOの穂積さん、CEOの邉さん、ライターの高崎さん。現在は3人で共同生活をしている。

左から、CCOの穂積さん、CEOの邉さん、ライターの高崎さん。現在は3人で共同生活をしている。

IREMONO CEO 邉 裕明さん

Profile

邉 裕明Piyon Yumyon

代表取締役CEO。企画からデザイン、フロント、サーバーサイドまでをこなすオールラウンダー。2015年4月「好きなヒトと、好きなバショで好きなコトをして働く」という夢のような夢を実現するために、株式会社IREMONOを創業。

東京の利点も享受しつつ、自然の中で仕事できる場所を探した

CEOの邉 裕明(ピョン ユミョン)さんは大学卒業後、Web制作会社のカヤックで2年間エンジニアとして働いた。最初から起業を志しており、カヤックは自分に足りない技術・経験を得る場所として選んだのだという。

共同創業者の穂積一志(ホヅミ カズユキ)さん共々、出身は関西。富士見町に地縁があるわけではない。創業の地として富士見町を選んだのは、邉さんが起業によって実現したいビジョンと、偶然のタイミングからだった。

「大学生の時、3ヶ月ほどフィリピンに語学留学に行っていました。そこで先生に勧められて、最後の1週間は一人旅でパガッドパッドというリゾート地に行ったんです。泊まったのは木でできたクボと呼ばれる家で、目の前にすごく綺麗な透明な海があって、まわりは大自然に囲まれている、そんな場所でした。びっくりしたのが、そんな環境で快適にネットサーフィンができるんですよ。そのとき、『僕はすごい時代に生まれたんだ。これならどこでも働くことができる!』と気づいたんです。

それ以来、“好きな場所で働く“ということを考えるようになって。Webのサービスなら場所にとらわれずに企画から開発、運営までできるんじゃないかと、学生時代から友達といろいろなサービスを開発してきました。今一緒にやっている穂積も、その頃からの友達です。社会人になってからも、遠隔で連絡を取りながら一緒にサービスを作っていました。『bikkuri』や『creive』は学生時代に作ったもので、『FEELY』は社会人になってから3日位で作りました。これらがかなり大きくなってきたので、そろそろ会社にしようかと考えたんです。

どこで起業するかと考えた時、スタートアップって渋谷や新宿にオフィスを構えるのが当たり前という雰囲気がありますけど、東京以外の自然の多い場所で探したいと思って。別に東京が嫌いなわけじゃないんですよ。東京もすごくメリットがあることは分かっているので、そのいいところも享受しつつ自然も満喫できる、そういう働き方ができないかなと。それで東京から二時間圏内で自然溢れる場所をいろいろ探しました」

そんなときに見つけたのが、富士見町の「ホームオフィス計画」だった。町への移住者に対し、富士見町が町内の空き家を「ホームオフィス」として斡旋するというプロジェクトだ(詳しくは、同プロジェクトに関わり、ご自身も富士見町に移住された津田賀央さんのインタビューをご覧ください→「八ヶ岳に住みたい!」から1年半で移住。新しい暮らし方・働き方を後押しした力とは【後編】)。

「ホームオフィス計画のことを知ったのは、greenzの記事がきっかけです。このログハウスの写真がどーんとあって、『元カフェのログハウス』、『東京から2時間15分』、『温泉まで4』、『八ヶ岳のふもと』というキーワードにすごく惹かれて、速攻メールして電話しました。

もうその時点で会社は辞めて、住んでいた部屋も4月以降の契約は解除していたんです。だからここが決まらないと住所不定無職という状況で…(笑)」

4物件に対して60件の応募があったというから、富士見町での開業に向けて背水の陣を敷いた格好の邉さんは気が気でなかっただろう。しかし熱意が通じたのか、最終的には希望通りにログハウスで開業することができ、今に至る。

仕事と生活の境目がない、文化祭前夜のような毎日

現在邉さんは、月に2回ほど東京に行って打ち合わせをしたりイベントに参加したりするほかは、ほとんど富士見町で過ごすという。邉さんと穂積さんはシェアハウスでの生活経験があるというから共同生活には慣れているのかもしれない。でも、仕事と生活の場が同じということに難しさはないのだろうか? 「ずっと仕事をしている状態になりませんか?」と聞くと、「仕事と生活の真ん中にいるような感じ。ずっと楽しいです」という答えが返ってきた。

「ここは夜は星がめっちゃ綺麗だし、夏だったら山に登ったりできるので、ライターさんやインターン生が別荘感覚で来るんですよ。そのときは昼間は一緒に作業して、夜になったら映画を観たり、みんなで騒ぎまくって、めっちゃ楽しいんです。学校で文化祭の準備をしているときみたいな雰囲気ですよね」

ログハウスの上には満点の星。

ログハウスの上には満点の星。

週末にはみんなで山登りも。

週末にはみんなで山登りも。

余暇の過ごし方も、以前とは随分変わったようだ。

「近所に映画館すらないので、DVDを借りてきて観たりとか、普段はここで3人で過ごすことが多いです。東京や横浜にいる時は、誰かに『ご飯を食べに行こう』と誘われればすぐに行っていたけど、こっちにいるとそういうわけには行かないですよね。だから人と会う回数は減ってます。でも、逆に大切な人会うということに焦点が当たって、その時間を大切にするようになりましたね」

週末は山に登ったり、マラソン大会に出たりすることもあるそう。仕事もそれ以外も境目がない生活というのは、起業したばかりでメンバーも若いという状況ゆえに成り立っている面があるかもしれない。でも、それをする場所が都会のマンションではなく、自然の中のログハウスであるという点が、心身のバランスを保つのにも良い効果を与えていそうだ。

遠隔で仕事をするチームにとって、集まる場所があることの利点

このログハウスには最大7人泊まれる。自然の中で仲間が集まれる場所があるというのは、仕事の上でもとても役に立っているようだ。

「僕たちは、海外にいる人も含めて30人くらいのライターさんやエンジニアさんなどと一緒に仕事をしています。いつもSlackとSkypeを立ち上げていて、仕事の話も雑談もたくさんするので、場所は離れていても常につながっている、そういう遠隔での仕事のやり方がうまくいく、信頼できる人に仲間になってもらうようにしているんです。

ただ、エンジニアの人とは、集中して一緒に開発をしたいというときがあって、そういうときはここに来てもらいます。それと、学生インターンは必ず最初に3日から1週間くらいは来てもらって、仕事や会社の考え方を理解してもらうようにしているんです。ライターさんは、来たい人が自由に来ます。

『ここに来たら癒される』と言う人も多くて、この半年で、40人くらいは来ましたよ。今一緒に住んでいる高崎さんは元々富山で会社に勤めていて、始めの頃は車で毎週末ここまで来てました(笑) その後会社をやめて、4月からは東京で働く予定なので、それまでの間ここで仕事してもらってるんです」

遠隔で仕事ができる体制を整えながら、場所も有効に活用してチーム作りをしている様子が伺える。

IREMONOのオフィス

地方へ移住するときは「制度に乗る」のがおすすめ

地方への移住を希望する人は増えているが、実際に住み始めると元からの住民とうまく交われないなど、課題を抱える人も多いという話をよく聞く。

その点、邉さんたちは地元の人が野菜を分けてくれることもあるなど、うまく馴染んでいっているようだ。それは、「ホームオフィス計画」という富士見町の制度でここに来たということが大きいと、邉さんは言う。

「僕らは『ホームオフィス計画』で来たので、最初から周りの方に知ってもらえていたんですよ。それで自治会にも入って、いろいろ教えてもらうことができました。役場の方にもいろいろお世話になっていて、町のフォローというのはすごく大事だと思います。そういうことが何もなく来ると、交流がなくて孤立するな、とは思いますね。だから移住の制度みたいなものがあるんなら、乗っかったほうがいいと思います」

都会育ちの邉さんは、八ヶ岳のような高地での生活は初めてだったが、地元の人から薪の割り方や山菜の取り方も教えてもらえた。冬を迎えるときには、役場の人が「タイヤをスタッドレスにした?」というような心配もしてくれたという。田舎暮らしにおいて交流があるということは、単に寂しくないというだけではなく、生活がしやすくなるということなのだ。

また、気候や住んでいる人の気質などは土地によっても異なる。邉さんたちのログハウスがある場所は別荘地で移住者が多く、新しく入ってきた人を受け入れる風土があったのも良かった。もし移住を考えるなら、試しに一週間でも住んでみて合うかどうかを確認した方がいいと、アドバイスをしてくれた。

3つの「好き」を成り立たせるための挑戦を続けていきたい

邉さんと穂積さんは、会社を立ち上げるにあたって「好きなヒトと、好きなバショで、好きなコトをして働く。」をコンセプトとして掲げた。

「このコンセプトの3つすべてをいかに揃えるか、というのが課題というか、挑戦だと思っています。IREMONOという会社名は、いろんな考え方の人がひとつの入れ物の中に入って、相乗効果を起こすような場を作りたいという思いで付けました。だから、これからメンバーが増えていくと、その人達のやりたいこと次第で会社がやることも変わっていくと思っています」

働く場所についても、仕事の内容同様、柔軟に考えていきたいと邉さん。

「最終的には、場所にとらわれない働き方にしていきたい。今はそのゴールに行くまでの始まりの段階なので、コアになるメンバーは一緒に濃い時間を過ごして文化を共有したいと思っています。当面は、人数が増えたらこのあたりにオフィスを増やすのもありだし、富士見町にコワーキングスペースができたので、そこでやってもいいですね。いずれ文化ができてきたら、メインのメンバーも遠隔でどこででも働ける状態を作りたい。『どこででも』を実現するための準備として、『山の中でもできるのか?』ということを今ここでチャレンジしているんです」

いずれみんなが場所にとらわれない働き方になったとしても、何ヶ月かに1回は集まって目線合わせをするなど、八ヶ岳の拠点は活用していきたいという。

リモートとリアルな場を組み合わせ、チームで楽しく働けるスタイルを追求するIREMONO。彼らの挑戦の行方は、これからの働き方や組織のあり方について考える他の組織にもきっと参考になるだろう。

☆☆
取材・文/やつづか えり

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