ここ数年、本業としての仕事を続けながらも、土日や就業後の時間を活用してプロボノの活動に力を入れている方が増えています。その一方で、そういったライフスタイルに興味はあるものの、現実的には「仕事と家庭だけで精一杯!」なんていう方も少なくないはずです。

キャプション:旧街道沿いの名所旧跡などの歴史・文化情報を調べてWikipediaに掲載するワークショップ「ウィキペディア街道」は、今回で4回め。西村さんはお子さん連れでファシリテーター役を務めました。
今回ご紹介する西村祐貴さんは、普段、大手企業でITコンサルタントとして活躍されている傍ら、家庭では2人のお子さんのパパとしての役割も果たしています。さらに土日には、Code for Setagayaという団体での活動にも力を入れるなど、日々精力的に活動されています。
そんな、仕事と家庭と地域活動の“三兎”をバランスよく追うための秘訣を知るため、西村さんもファシリテーターとして参加された『たまがわ かわらマッピングパーティ ✕ ウィキペディア街道「大山道」』に同行させていただき、お話をうかがってきました。
子どもの誕生をきっかけに始めた、地域活動
Profile
西村 祐貴 Nishimura Yuki
世田谷区在住。普段は都内のIT企業に勤務。子育てを機に自分たちが暮らす地域・まちづくりに強い関心を持つ。
2014年に仲間と一緒にCode for Setagayaを立ち上げ、ITを活用した地域プロボノ活動を開始。
自分たちの地域を知るきっかけを作ることが地域への愛着を育み、より住みやすいまちづくりに繋がると信じ、まちあるき・調査などを通じ、世田谷の魅力を広く発信する活動等を実施中。
西村さんが主に週末を利用して活動されているCode for Setagayaでは、「ITを活用し、地域(世田谷)に役立つことを」というコンセプトの下に、各メンバーが各々の関心に基づいた活動をされています。
<Code for Setagayaの取り組み一例>
- 空き家活用など都市問題への取り組み
- 地域に関する情報発信(ウィキペディア街道)
- ゴミ出し情報アプリ(5374jp世田谷版)
- その他、防災、選挙など
そもそも、西村さんが仕事と家庭以外の「地域の活動」に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか? そのきっかけは、お子さんの誕生が大きかったのだと言います。
「子どもができて、子育て環境として地域を意識し始めてからです。ちょっとした時間を使って、子どもたちが育つ環境を良くできたらいいなと。いつの間にかちょっとした時間でなくなってきていますが(笑)」
西村さんは、これまで趣味のコミュニティや会社という限られた中での活動に終始していたものが、地域の活動に関わることで、大きくその世界が広がったと感じているそうです。
また、実は地域のために何かしらの活動をされているという方が多くいることを知って、ご自身でも地域に対して貢献していきたいという想いが強くなったそうです。
自然にたどり着いた「子どもを現場に連れて行く」という選択肢
もともと家族想いで、お子さんと遊ぶ時間が大好きという西村さんは土日に行われるイベントへ参加する際、内容によってはお子さんを連れて、一緒に参加してしまうことも少なくないのだとか。
そんなとき、子どもを「連れて行く/行かない」の判断基準はどういった点に重きを置いているのでしょうか。
「何らかの子どもが楽しめる要素がある、あるいは楽しむ工夫が出来るイベントに連れて行くようにしています。そういう面では講演一辺倒のイベントはNGです。それから周りのご理解も大切ですので、どんなコミュニティであるかも考慮しています」
また、イベント参加時には、子どもが飽きてしまった場合に備え「お絵描き道具」と「折り紙」を欠かさずに持ち歩くという優しい一面をのぞかせる一方で、お子さんに対して事前に(本人がどこまで理解できているかはさておき)、これから参加するイベントの内容をきちんと説明し、本当に行きたいかどうか本人の意思を確認しているのだそうです。
こうした様々なエピソードをうかがっていくと、西村さんにとって、そういった「土日のイベントに子どもを連れて行く」という選択肢も、あくまでも自然にたどり着いた結論なのだろうという印象を強く感じました。
事実、イベントの参加者の方からも「西村さんはいつも、肩肘張らずに“自然体”で活動されている姿が印象的です」という言葉を受けて妙に納得しました。
子どもを活動の現場に連れて行くことで得られる価値

イベント中フィールドワークに訪れた世田谷の歴史あるお寺「行善寺」の境内より、眼下に広がる町を眺める西村さん親子。
そんな西村さんでも、これまでにお子さんをイベントに連れていくことで大変な思いをした経験があるそうです。
「もともと小さい頃から色々な遊び場に連れて行っていたので子どもを見ること自体は苦ではないですが、やはり大人メインのイベントに連れて行くと色々と大変ですね。一人で騒いだり、物に触ったり、頻繁にトイレに行ったり。『飽きたので帰りたい!』と言われたこともあります(笑)」
そんな思いをしてもなお、お子さんを連れて行くのにはどういった理由があるのでしょうか。そこには、子どもにとっての成長と親としての役割を考えた、「良き父」としての想いがありました。
「子ども連れでの活動はとても大変です。色々と苦労します。でも親がやっている地域の活動に直に触れる機会は、子どもにとって非常に良い経験になっている、という手応えがあります。子どもって自分たちの親がどんな活動をしているかにすごく関心を持っているので、少しでもそれを見せてあげる機会があると良いのではないかと思います」
西村さんのお子さんが大きくなって、話し合われている内容がよく理解できるような年齢になった時、イベントに参加して、どのような反応を示すようになるのか、今から楽しみですね。
ITという仕事で培った専門性をプライベートの地域活動でも活かしている点や、その活動に子どもも連れて行ってしまうことで家族との時間も充実したものにしている点など、西村さんの三兎を追うスタイルは、是非参考にしたいところです。
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参考
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取材・文/宅美 浩太郎・やつづか えり 撮影/やつづか えり

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