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介護と仕事(「エンジニアサポートCROSS 2013」イベントレポート)

2013/01/19   更新:2018/11/30

1月18日に行われた「エンジニアサポートCROSS2013」というイベントに参加した。

お目当ては「クラウドな働き方 x 介護 〜来るべき育児と介護をどうITの力で乗り越えるか!?〜」というセッション

「エンジニアサポートCROSS 2013」というイベントは、“WEBテクノロジーに関わる人たちが集まり、WEBの未来を語る勉強会”ということで、プログラムには様々な技術的用語が並ぶ中、「育児」「介護」という単語はかなり異色だ。

セッションオーナー(つまりこのセッションを企画し、進行役をする人?)の小室さんは福岡から、スピーカーの田名辺さんは札幌から、相羽さんは金沢から、竹下さんは東京からの参加。普段はバラバラの場所にいる皆さんだが、全員「JAWS-UG」というAmazon Web Service(AWS)のユーザーグループのメンバーというつながりがあるそう。

ちなみに、AWSというのはアマゾンが企業などに向けて、サーバーを始めとする各種ITインフラを提供するサービス。利用者はシステムを開発・運用するために自前で高いサーバーなどを買って設置することなく、必要な規模や機能に応じて利用料を払えば良いため、コスト低減やシステム開発のスピードアップに役だっている。昨今よく耳にする「クラウド」サービスの一種だ。

今回のセッションの登壇者は、全員が「クラウド」に精通したエンジニアであり、実はそれがセッションのテーマ「クラウドな働き方 x 介護」と密接に関係している。

左から竹下康平さん(@DynaKou)、相羽大輔さん(@aibax)、田名辺健人さん(@dateofrock)、小室文さん(@ayakomuro

介護は必ず自分ごとになる

最初に小室さんから、日本における介護や地域における仕事の状況など、統計情報を元にした課題意識が提示された。

日本の人口推移の予測を見ると、これからは介護する側とされる側が1:1に近い比率になる。そして、介護が必要になったときに家族の中で主な介護者になっているのは、配偶者が36.5%、子が28%、子の配偶者が31.7%。つまり、子どもが実父母または義父母の介護をしているというケースがとても多い。

一方、日本の人口も仕事も都市部への集中度が激しい。もし親の介護のために故郷に帰るとして、それまでのキャリアを活かした仕事を得られるかというととても厳しそうだ。

後のディスカッションで、竹下さんから「介護は必ず自分ごとになる」という発言があったが、今働き盛りの年代のほとんどの人にとって、親の介護というのは必ず降り掛かってくる課題であり、そのときにきっと住む場所や仕事、経済的な面でも悩むことになりそうだ、ということが小室さんのプレゼンから見えてきた。

詳しくは、小室さんのプレゼン資料をご覧ください。

Cross2013::クラウドな働き方 x 介護 〜来るべき育児と介護をどうITの力で乗り越えるか!?〜 from Aya Komuro

転職せずに、東京から札幌に移住した田名辺さん

ひとりめのスピーカーの田名辺さんは、東京にある印刷会社に勤めるIT技術者。20年間東京で勤務の後、2011年11月に札幌に移住した。

転勤を命じられたのでも転職をしたのでもなく、子どもを自然の中で思い切り遊ばせたい、子どもにふるさとを残してやりたい、という思いから、自分のふるさとである北海道に帰る決断をし、会社と交渉をしてテレワークを実現したのだそう。

北海道に帰りたいという思いはお子さんが生まれた7年前から抱いていたが、2011年3月の大震災と離れて暮らすご両親の病気をきっかけに、具体的に決断して動いた。

震災後、システムを社内のサーバーで運用するのは危険だと考え、それらをクラウド上に移したことで、田名辺さんはどこででも仕事ができるという状態になっていた。北海道でもできるはずだが、問題は会社が認めてくれるかどうか。

会社に認めてもらえなければ転職も覚悟の上で交渉したという田名辺さんもすごいが、新しい働き方を認めた会社もすごい。

正式に決める前に、田名辺さんが出社しないで自宅で働くテレワークの実験をしてみたところ意外にもスムーズで、これなら大丈夫という雰囲気になったという。田名辺さんはIT系技術者だが、会社自体は印刷会社でみんながITに詳しいわけではない。それでも、直感的で分かりやすいSkypeが、お互いのコミュニケーションにとても役立っているそうだ。

Skypeのように便利で簡単なツールが低コストで使えるようになって、さらにIT系の仕事ならテレワークにも取り組みやすいはず。だから問題は技術ではなく、本人の意志や周囲の理解と協力にあると田名辺さん。

自分の事例を紹介することで、育児や介護をしながら仕事を続けられるワークスタイルが広がればと考え、今回の発表をされたそうだ。

田名辺さんのプレゼン資料。家族で北海道に移動する途中に立ち寄った様々な場所、そして北海道の景色も素敵だ。

クラウド移住体験記 from Takehito Tanabe

突然、両親の介護の問題に直面した相羽さん

金沢でWebシステム開発の会社を経営している相羽さんは、昨年から突然、ご両親の介護を担う立場になった。

それ以前は、新潟県の妙高高原の実家でお父さんがお母さんを介護していたが、事故でお父さんが骨折し、動けなくなってしまった。そして入院先での検査で他の病気も見つかり、長期入院になってしまったのだ。

ひとりっ子だった相羽さんは、お父さんの介護認定手続きやお母さんの介護施設探し、通院などで、一時期は車で2時間半かかる金沢と実家との往復を週3回していたという。

当然、仕事は予定通り進まなくなるし、移動のための費用もバカにならない。
介護はまだまだ先の問題と思っていたのに、突然仕事と介護の両立に悩むことになってしまった。

半年ほど行ったり来たりの生活を続けた後、頻繁に行くんだったら実家で仕事できるようにすればいいじゃないか、と考えた相羽さん。やはりクラウドを利用して、インターネットとパソコンあればできる仕事だったので、現在は妙高高原の実家にサテライトオフィスを設置している。

きっかけは大変だったが、運良くお母さんが入所できた施設とも近く、別荘地でもあるという高原は自然がいっぱいで、仕事にもよい環境だそうだ。

相羽さんは、介護について悩んでいた時にそのことをFacebookに投稿したところ、周りにも同じように介護の大変さを経験している人たちがいることがわかったという。

介護のことはなかなかオープンにしにくい話題だが、今回のように話をすることで、悩んでいる人が誰かに話したり解決策を得るきっかけになったら、と考えているそうだ。

相羽さんのプレゼン資料はこちらから。こちらも、妙高高原のオフィス周りの景色が本当に気持ちよさそう。

ITで介護の現場に関わる竹下さん

最後は、介護施設に対するIT支援の会社の代表であり、仕事やボランティアで長年介護に関わっている竹下さんから、知っておきたい介護の制度などのレクチャーの後、介護に対する熱い思いが語られた。

介護や介護業界には、どうしても暗い、きつい、ダサいといったイメージがつきまとうが、そうではなくて「介護は明るい!」という竹下さん。

ヘルパーが主人公の『ヘルプマン!』というマンガや介護の現場で活躍するかっこいい若者の存在、IT業界でみられるようなコンテストや勉強会、コミュニティが介護業界にも存在し、活発な活動が行われていることなど、私たちが持っているイメージを覆すようなことがたくさん紹介された。

介護は必ず自分ごとになる。一方で介護施設も千差万別で、かかる費用も力を入れているサービスも施設によって異なる。だから今のうちに興味をもって、自分の親だったら、自分だったら、どういう施設にお世話になるのがいいだろう…と考えてみるのがいいんじゃないか、という言葉印象的だった。

なお、介護の現場を知るには、ボランティアに行くのが一番。おじいちゃんおばあちゃんの話し相手をするだけで、施設のスタッフにはとても助けになるし、何よりお年寄りから学べること、心からの感謝を受けられることなど、得られるものも色々あるそうだ。

最後のパネルディスカッションでは、IT系技術者らしく、ITが介護の現場をサポートしたり、将来の超高齢化社会でみんなが安全に暮らせる社会を実現するための仕組みを作れる可能性はすごく大きいのでは!という話題で盛り上がった。

クラウドのおかげで仕事はどこでもできるようなってきているけれど、そんな時代だからこそ、家族とは必要なときにすぐに会える環境を作っておきたい、という意見も印象的だった。

セッション後、会場前で記念撮影。

セッション後、会場前で記念撮影。

☆今回登壇された田名辺さんには、近日中に札幌での追加取材をさせていただけることになりました。お楽しみに!
→2013/2/6 田名辺さんへの取材記事を公開しました。こちらもぜひご覧ください。
 子どもにふるさとを 〜会社を辞めないUターン〜

取材・文・撮影/やつづか えり

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