「八ヶ岳に住みたい!」から1年半で移住。新しい暮らし方・働き方を後押しした力とは【前編】
2015/09/30 更新:2018/12/10
津田賀央さんは今年5月、妻とふたりの子ども(6歳・3歳)と共に、長野県富士見町に移住した。富士見町は八ヶ岳のふもとにある高原の町。広い空の下、富士山や八ヶ岳、南アルプスの山々を眺めながら暮らせる気持ちの良い場所だ。

取材当日、近所の畑ではソバの花が満開!
以前は横浜から東京に通勤していた津田さんだが、移住にあたって会社を辞めたわけではない。現在は、週に3日は東京で勤務し、残りの日は個人で引き受けている仕事をしたり家族と過ごしたりしているのだ。
Profile
津田 賀央 Tsuda Yoshio
2001年から広告会社、㈱東急エージェンシーにてデジタルコミュニケーション領域におけるプランナーとして、様々な国内クライアント企業のデジタルプロモーション企画やサービスに携わる。 2011年末からはクラウド技術を用いたサービス開発やプロトタイプのデザイン、ユーザー・エクスペリエンス(UX)を設計するプランナーとしてソニーに移り、現在に至る。 2015年5月から長野県の富士見町へ移住。役場との共同プロジェクトの企画設計や実行を機に、自身のプランニング会社、Route Design合同会社を設立。 UXデザインからソーシャル/コミュニティデザインまで、幅広く取り組む。
「今の暮らし方・働き方が絶対ではない」という思い
移住のきっかけは、2013年の秋に家族で八ヶ岳でキャンプをした帰り道、妻の聡子さんが「ここに住みたい」と言ったことだった。それは聡子さんにとっては突然の思いつきだったそうだが、その言葉が津田さんの背中を押した。津田さんは以前から、「今住んでいるところが絶対でいいのか」「仕事も働き方も暮らし方も、固定じゃなくて良いはず」という思いがあったのだという。
「『WORK SHIFT』という本に影響されたということもあるんですけど、これからはプロジェクトベースで仕事をするようになったりと、働き方も変わるだろう。そうなると住む場所も変わるよね、と考えるようになりました。都会じゃなくても全然いいとも思っていたんです」
津田さん夫妻は毎年フジロック・フェスティバルに参加したり、登山を楽しむなど、かなりの山好きである。「確かに、どうせ住むなら山の近くがいいよね」と、「八ヶ岳に住みたい」という聡子さんの言葉にピンときたようだ。現在は、思い立てばすぐに山へ出かけられる環境になった。このインタビューの前日も、家族で近くの山小屋まで登り、お昼を食べて帰ってきたそうだ。
山が近いことのほかにも、現在の暮らしは魅力が多い。富士見町から借りている元空き家の自宅は、きれいで広々。庭が広大で家庭菜園を作ってもまだまだスペースがあり、子どもたちものびのびと遊べる。見晴らしの良い開かれた地形によるものか、別荘地も近く人の出入りが多いためか、地元の人たちはオープンで親しみやすい。近所の人たちは、毎日のように育てた野菜を分けてくれるそうだ。子どもたちには、自然環境を活かした教育をしてくれる素敵な幼稚園も見つかった。

ご近所さんからの収穫物のおすそわけ
自然の恵みを存分に享受できる一方、現代人が暮らしにくいほど田舎ではないというのも、富士見町の特徴だ。町内には24時間営業のスーパーもあるし、美味しいカフェやレストランも豊富。何よりも、車でも電車でも2時間半ほどあれば東京に行けるという点が、今の津田さんの働き方が実現した大きなポイントだ。
週3東京、週4富士見町の、二拠点生活
現在津田さんは、火〜木曜の3日間は東京・品川のソニー本社で仕事をしている。火曜日の始発電車で東京に移動し、その日と翌日は横浜の実家に滞在、木曜日の新宿21時発か、間に合えばもう1本前の19時台の特急あずさ号で富士見町に帰ってくる。そして月曜日と金曜日は、会社のメールに対応したりしつつ、メインは自分で起こした会社の仕事をする。

自宅の仕事場で
最初の頃は、毎週の移動に疲れを感じたし、今でも週に3日は子どもと会えない寂しさがある。でも、毎日終電で帰ってくるような生活よりは、金曜日から月曜日までは家にいてたっぷり家族と触れ合えるので、かえって満足感が高いのだそうだ。
いずれ、本当にどこにいても仕事ができるような世界になれば、東京に出ていく必要はなくなるのかもしれない。だが過渡期である今、津田さんは、得られる情報やビジネスのチャンスが多いという東京の利点を享受しながら、自分の価値観に合う土地に根を張るという「二拠点生活」に、魅力を感じているという。
(後編では、富士見町への移住のきっかけになった出会いや、週3勤務を実現するために津田さんが行ったことなどを紹介します)
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取材・文/やつづか えり 撮影/八塚 裕太郎

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