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子育てと仕事を分けない、「子連れ出勤」の可能性

2013/01/15   更新:2018/11/30

菅野涼子さん

Profile

菅野 涼子 Kanno Ryouko
茨城県取手市出身。文化服装学院スタイリスト科卒業後、株式会社アリシア入社。4年間アパレルデザイナーとして勤務したのち、第二の夢であった介護の世界に転身。
2008年、第一子出産を機に退職。2010年、有限会社モーハウス入社。デザイナーとして授乳服の生産企画を担当。現在2児の母として仕事と子育ての両立に奮闘中。

菅野涼子(かんの りょうこ)さんは、授乳服を製作・販売する有限会社モーハウスでデザインや商品企画の仕事をしている。

「授乳服」とは赤ちゃんにおっぱいを飲ませるための機能が付いた服のこと。前のボタンをはずしたり裾をたくし上げたりして胸を露出する必要がなく、いつでもどこでも授乳がしやすいようにデザインに工夫がされている。

モーハウスは授乳服の製造・販売におけるパイオニア的な存在として、子育てを経験したお母さんたちには有名な存在だ。また、社員が「子連れ出勤」をする会社としても注目されている。

最近は社員のために託児所を設ける企業が少しずつ増えているが、モーハウスの「子連れ出勤」はそれとは違う。お母さんは子どもと一緒に出勤し、誰かに預けるのではなく、そのまま子どもと一緒に仕事をするのだ。

菅野さんも、生後7ヶ月の仁近(にちか)ちゃんを連れて勤務をしている社員の一人。

モーハウス社内で初めてお会いした時、菅野さんはちょうど授乳中だった。でも、そうだと言われなければわからないくらい自然な姿勢でデスクに向かい、器用に両手を使って作業をする様子が、初めて見るこちらには衝撃的だった。

赤ちゃんを連れて会社で仕事をするというのがどういう状態なのか、本当にそんなことができるのか、想像もつかないという人は多いのではないだろうか。

そこで、菅野さんに日頃の仕事の仕方や、子連れ出勤をするようになったきっかけ、感想などを聞いた。

モーハウスでは、ミーティングの場に子どもがいるのも日常的な風景。

モーハウスでは、ミーティングの場に子どもがいるのも日常的な風景。

出産による仕事のブランクをなるべく短くする働き方

菅野さんは、仁近ちゃんの出産ひと月前から自宅作業に切り替え、出産後もひと月経つ前から自宅で仕事を再開した。1ヶ月経って外出できるようになると少しずつ子連れ出勤を始め、現在は在宅勤務と子連れ出勤が半々くらいの割合になっている。
出産直後で子育てだけでも大変だろうに、仕事なんてできるのだろうかと心配になってしまう。

だが、モーハウスの社長である光畑由佳さんによれば、産休・育休が長いほど、自分のブランクや職場の状況の変化が気になって職場復帰するのが怖く感じる人が多く、なるべくブランクを短くすることが、出産した女性社員の定着率を高めるのに効果があるそうだ。

菅野さんも、「(出産のために仕事が)途切れずにそのまま継続している感じだったので、スムーズでした」と言う。

それでも、やはりワーキングマザーの1日は忙しい。

仁近ちゃんは二人目の子で、上の子は保育園に行っている。普段は6時半頃起きて家事をし、9時前に保育園に送った後に、車で出勤。退社時間はまちまちで結構遅くなることもあるが、平均すると18時くらいに保育園に迎えに行って帰宅、というのが出勤のときのスケジュール。自宅作業の日は、もう少し早めに迎えに行くようにしているそう。また、状況によっては、深夜にも自宅で仕事をすることもあるという。

現在は在宅勤務が基本で、事務所に行かないとできない作業やミーティングがある場合に出勤している。どちらも、仁近ちゃんを抱っこしながら、あるいはそばに寝かせながらの仕事、不便や困ることはないのだろうか?

子どもと二人三脚の仕事術

「ずっと抱っこしているので、確かに体力は使うのかな、という気はします。でも、大分慣れたかも。手がふさがっているけど空いている、という感じです」と菅野さん。

確かに、モーハウスのオフィスでは菅野さんも他の子連れ出勤の社員も、子どもを抱っこしながら、または周りで遊ばせたり寝かせたりしながら、ごく普通にデスクワークをしたり、打ち合わせをしたりしている。結構ざわざわしているのに、オフィスの隅に敷かれたマットの上ですやすや眠っている赤ちゃんも…。母も子も、その状況にすっかり「慣れている」という感じだ。

オフィス内に、赤ちゃんを寝かせることのできるスペースがある。

オフィス内に、赤ちゃんを寝かせることのできるスペースがある。

また、子どもが泣き続けて困るということもほとんどないらしい。それは、子どもが抱っこして欲しい時にすぐ抱っこしてあげられる、おっぱいを欲しがればすぐに授乳できる、ということが大きいのだろう。また、子連れ出勤している人やその経験者がたくさんいることで、上手にあやすコツのようなことも、自然に学びやすいのだと思われる。

菅野さんは、モーハウス入社当時1歳後半だった上のお子さんも、翌年度保育園に入るまでの間一緒に連れて出勤していた。だが環境に慣れておらず、すでに自我が出てくる時期であったこともあって「今は静かにしていてね」といってきかせるのが難しかったという。

このような中途入社のケースを除いて、ほとんどの子連れ出勤は生後間もなくから始まる。そうすると、子どもの方も「お母さんが仕事をしている」という状況や仕事場という環境の中で育ち、順応できるようだ。

それでも、一緒にいる限りは子どもの生活のペースに合わせて行動する必要はある。泣いているときは手を止めて…、ということもあり、仕事のスケジュールは普段から余裕を持って組んでおく必要があるだろう。

また、「この日は出勤」と決めていても子どもの体調などによっては急に行けなくなることも。そんなときは、Skypeで打ち合わせに参加することもある。でもさすがにみんながそういうことに慣れているようで、「打ち合わせ自体は離れていても何とかなります」と菅野さん。

急に行けなくなる事態も想定してあらかじめ資料を準備しておいたり、普段の情報共有をしっかりしておいたり、ということが意識的に行われている。また、体調を崩したり、明日お休みしてしまうかも、というときは早めにチームのメーリングリストで連絡して、お互いの状況を把握し、業務の引継ぎをするようにしている。

小さいこどもを持つ社員が多いので、緊急事態はあるものと考え、お互いにカバーし合うための仕組みづくりと意識づくりを積み重ねてきているのだ。

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