企業で在宅勤務制度を導入する場合や、これから在宅で働いてみたいと考えている方におすすめしたい本が『テレワーク―「未来型労働」の現実 (岩波新書)
』です。
「テレワーク」とは、政府も使っている用語で、「情報通信技術(IT)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と説明されることが多いです。(ただし、「柔軟な働き方」というほど労働者側に選択の自由があるわけではないので、この定義には問題があるというのがこの本の筆者の立場)。
本書では「テレワーク」を以下の4つに分け、1〜3についての実態を伝える、という内容になっています。
- 在宅勤務型
(企業や役所などに雇われている従業員が自宅で働き、それが正規の労働時間として認められる形態。毎日ではない「部分在宅勤務」も含む) - モバイルワーク型
(営業系の社員などが、職場や自宅だけでなく移動中の乗り物内や出先などで事務処理をこなす形態) - 在宅ワーク型
(企業等にやとわれるのではなく、請負契約で自宅で仕事をする形態) - SOHO型
(小規模オフィスや自宅などで、法人格をもって事業を行う)
“「未来型労働」の現実“というサブタイトルからも感じ取れると思いますが、この本は「テレワーク」に対してかなり批判的です。
すでに「テレワーク」を実践している人たちを取材し、どういう仕事をしていくらくらいの収入を得ているのか、ということが具体的に書かれているのですが、製薬会社のMRや「データ入力」などの在宅ワークをする主婦など、過酷な労働、低賃金な労働という状態に陥っている人が結構いるんだな、ということが分かります。
どうしてそうなってしまうのか、筆者は「テレワーク」のもたらす2つの問題として“労働の不可視化”と“「強制された自己裁量」の幻惑”の2点を挙げます。
“労働の不可視化”というのは、本人が働いている様子が見えず労務管理がしにくい、という管理者側の難しさだけでなく、他の労働者の様子が分からないために孤立感を感じたり、自分の労働のきつさや賃金の低さに気づくことが出来なかったりする、働く側にとってのデメリットも含んでいます。
“「強制された自己裁量」の幻惑”というのは、多くのテレワーカーは働く場所や時間について「自己裁量権」を持っているように感じているけれど、それは課されたノルマやクライアントの都合の範囲に限定されたものでしかない、ということ。それでも「自己裁量」があるという本人のポジティブな意識が、逆に長時間労働や低賃金という問題に対して「仕方ない」と感じさせてしまっている、というのが筆者の見方です。
私はこれを読んでいて、「確かに…」とうなずく部分がたくさんありました。
それでも、私たちの環境がかなり変わって、(もちろん仕事の内容によりますが)仕事するのは会社の中だけ、というわけにはいかなくなってきているのが今のフェーズ。「問題があるからテレワークはやめておきましょう」とはならないでしょう。
この本に書かれているような問題点をおさえた上で、色々なところで試行錯誤が起きて、良いやり方がシェアされるようになってほしいと思います。「My Desk and Team」では、そのヒントとなる事例や考え方を紹介していきたいです。

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